南が”年長”の時のお話。
彼は今でも時々私のランニングにつき合ってくれる。
年長のころから、時間が合えば私のランニングについてこようとする。
彼に合わせて2キロ~3キロ程度の道のりを、風や光や木々や鳥や花や動物の話をしながら、ふたりでゆっくりと走る時間は私のとって至福の時だ。
「南は結構タフですよ」と南の両親(長男とお嫁さん)が、食事中に口をそろえてほめていた。
南はストライダーのレースに出るために、日ごろから練習を欠かさない。
負けるのが嫌なので、自分から父親にせがんで練習をしたがる。
タフさはそこで身に着いたのだろう。
それでも距離が距離なだけに、最初はすぐに根を上げて「帰ろう」と言うのかと思いきや、涼しい顔をして一度も歩くことなくついてくる。
それどころか
「ばーば、だいじょうぶ」と心配して何度も声をかけてくれる。
心がきゅんとして「優しいのね」というと、
「普通だよ」ってさらっと返すあたりも頼もしくて、ついニヤニヤしてしまう。
ある晴れた土曜日の朝のランニング中のこと。
「南、おとーさん先に行っちゃったね」
「いいんだよ、おとーさんはおとーさんのリズムで。それよりオレね、英語が得意になったよ」
「まーすごい。何を知ってるの?」
「ばーば、犬は?って聞いてみて」
「はいはい、じゃあ犬は英語でなんて言うのかな?」
「ドぉッグ!!」
「いい発音ねー。さすがだわ。じゃあ猫は?」
「にゃん!!!」
「おとーさん、先に行っててよかったわね」