i-class collection

ばーばと南 + Run&Music

6年生の食欲と3年生の進化論

石牟礼道子の「苦海浄土」を読んでいると、「ただいまー」と勢いよく玄関が開いて南が帰ってきた。

 

時計を見ると14時半を回っている。

「おかえり、はやいのね」と言うと

「今日は先生たちの研修だっていったじゃん」

と言って、南はカバンを玄関に放り投げてシャワーを浴びに行く。

 

 

「あーそうだったわね、おやつはまだだけど、あとでいいでしょ」とたずねると、

「いや、食べるよ。おにぎりでいいよ」と間髪おかずに、お風呂の中から南が大声で答える。

 

 

数時間前に給食を食べてこの食欲。

彼の食欲に季節と時間は関係ない。

 

いつもクラスの残りのご飯を担任の先生と2人でたいらげている、と言っていたことに

加え、今日はまだ給食後2時間しかたっていないというのに、おにぎりでいいって。

 

 

6年生になって南の食べる量と靴のサイズと身長・体重は、戦後の日本の経済成長曲線のように右肩上がりに伸びていく。

 

身長は160cmを超え、体重は55キロになった。靴は27.5cm。

だんだんと野球選手のからだになってきているようだ。

お尻はゼリーのようにぷりぷりしていて、押してもすぐ跳ね返ってもとに戻る。

 

きっと楽天の枕ランキングで1位がとれる……だろう。

その反発力はうらやましいほどだ。

 

 

先日の夕飯時、カレーを何度もおかわりをしにいっているな、と軽く油断していたら、なんと一人で3合を食べてしまっていた。

 

お釜の中を見たおかーさんは、

「いいわよ、たくさん食べなさい。おとーさんとおかーさんは炭水化物ダイエットね」といって、カレーの時は必ず3杯食べるけれど、1杯目を食べ終わりそうなところでスプーンが止まっているおとーさんに、キッチンの陰から目配せをしていた。

 

そう、子育て中の親は動物の親と一緒で、腹が減ってもガマンを強いられるのです。

 

 

**************

 

南が3年生の時の会話。

 

 

ばーば、キリンは高いところの葉っぱを食べるために首がのびたらしいよ」と南。

「よく知ってるのね、学校で習うのかしら」と感心してみる私。

 

 

「ちがうよ。学校の図書館で読んだんだよ」

「あら、学校でも本を読んでいるのね。えらいわね、すごいわね」

 

「たくさん読むよ。でもね、どうしてもキリンが高いところの葉っぱを食べたいから首が伸びたなんておかしいとおもうんだよね。そんな簡単にのびるものかな

「ばーばは、伸びないと思うわ」進化論反対派の私は即座に答える。

 

「でしょ、だってさその反対の話はないじゃん」

「反対?。反対ってなんなの」

相変わらず南は何を言ってるのかわからないが、何をいい出すのかなと少し楽しみにもしている。

 

 

 

そして、南先生のご意見。

「最初から首がながーいキリンがいて、足のほうの葉っぱを食べやすくするために足が縮むってことだよ。他にも魚が陸に上がって進化したって書いてあったけど、逆にゾウが魚や貝が食べたいから海に入って泳げるようになったとかもないし

 

「あー、そうよね。そういった発想をしたことはなかったわ。考えかたが柔らかくて素晴らしいわね。どうみてもアサリが何万年かたって、よいしょ!って陸に上がることはないわよね」

そういう見方があったかとその思考の柔軟さを見習う。

 

 

「ないよ。ない、ない。ナマコはずーっとナマコのままだよ。神様が次はナマコ!!だって思って作ったんだよ。こんな色でこんな形にしようって。がんばって考えたんだと思うよ。それにね、陸に上がることだけが進化なのかなって思うよ。どっちが安全かを考えると」

 

「そうね、陸に上がって人間に近づいていくことが進化と思うのはこっちの都合なのかもね」

 

 

 

 

「でしょ、そして僕はおとーさんを心配をしていてね、もしそうならそのうち海に入れるようになるんじゃないかって」

「そうかもしれないわね、おとーさんはシーフードが大好きだからね」

 

 

「できれば、川より海に入れるようになってほしいな」

「どうして」

 

 

「川の生き物はあまり食べることができないじゃん。それに海のものはおいしいし、出汁がよく出るっておかーさんも言ってたし」

「そうよね、海に入ってたくさんシーフードを採ってきてもらいましょう」

 

 

「だけどね、エラやひれがついたり、いつも皮膚が濡れたりしているおとーさんはいやだな。家の中や参観日に教室が濡れちゃうでしょ。それに、ともだちがお前のおとーさん何?、って聞いてきたときに説明もめんどくさいでしょ」

「じゃあ、変身できればいいんじゃない?」

 

 

「いやそれもだめ。変身してるとこをみたら絶対気持ち悪いじゃん