孫の南の学校では、5、6年生になって朝起きれない子、起きても学校に行けない子、学校に行くけれども教室に入れない子たちが増えている。
特に6年生の女子にその傾向が強くみられるようだ。
そんな中で、南の友達の3年生の弟が担任の先生とトラブル発生。
「今日は一日頑張ると約束したのにどうしてできないの」
責めたてる中年の女の先生に対して、家に帰ると言い張り強引に帰ってきた3年生の彼。
3年生になった直後から二人は相性が悪かったらしいのだが、季節が進むとともにその関係は悪化し、秋ごろから間断なくもめだして修復不可能に陥る。
彼は学校に行っても途中で保健室で過ごしたり、早退や不登校を繰り返すようになった。
今回ばかりは家族で学校に行くようにうながすが、彼は大きな決断をしたらしく、学校も友だちも好きだけど、あの先生が担任でいる間はもう絶対に学校に行かないと意見を曲げない。
その夕方にその担任から電話が入る。
「先生とはずっと意見があわなくて否定しかされないので、今回はかたくなに学校には行きたくないと言ってます。しばらくはこのまま様子をみます」と彼のおかーさんが話すことに対して、担任は
「私との相性はどうでもよくて、小学校は義務教育なので、彼は学校に来るべきなのですよ。わかってますかお母さん」と高圧的に言われて返す言葉がなかったそうです。
南に先生のことを聞くと、
「いつもブスッとしてて、すぐ怒ってあいさつしない先生だよ」
と教えてくれました。
「なんの話なの?」
と、たずねて南の登場人物と時系列が交錯する解読不能な答えを要約すると、
①日曜日に学校に野球の練習に行ったら、門が閉まってた。
②自転車組の何人かで錆びた鍵の番号を合わせていたが、なかなか合わなかった。
③後ろにはみんなを送ってきた車が並びだした。
④アセっているところに友達のおとーさんが来てくれて鍵を開けてくれた。
⑤門が空いたらその途端に反対の道路側に止まっていた車が、すっと横入りしてきた。
⑥アイサツも頭を下げるでもなく、そのまま学校の中に入って行った。
⑦親たちはなんなのあれはと怒っていた、それがその先生。
「へー、そんな非常識な先生がいるのね?」と返すと
「いつもだよ。根がくらいんだよアイツ」と南が涼しく言った。
☆☆☆☆☆
「義務教育」をのど元に突き付けられた対応について相談を受けたわが家と彼の家族で、新たな勉強が始まった。
いまさらと言えばいまさら。
この際にと言えばいい機会だなということで。
<教育基本法>
第4条 (義務教育) 国民は、その保護する子女に、
九年の普通教育を受けさせる義務を負う。とある。
子どもが学校に行きたいと言ったら、日本国民はそれをさまたげてはなりませんよ、という理屈だ。
子どもに向けた法律ではない。
なーんだ先生間違ってるじゃん、と心が楽になる。
いろいろ調べてみると、親には教育の義務があり、親だけでは大変でしょうから、義務教育はそれをお手伝いしましょうということらしい。
ちなみに南の報告によると、おとーさんが
「子どもの登校時に、両手を広げてその道をふさいでる人がいたら、子どもたちは「教育基本法第4条違反の人がいます!!」と言って大人の助けを求めなければいけないのだ」
と言ったらおかーさんから、「真面目な話をしているときにふざけません」とたしなめられたそうだ。
おとーさんらしいねと二人で笑った。
みんなで出した結論は、
①子どもが学校に行きたくないというのであれば、理由を聞いてちゃんと話をして、何かしらの危機を察しているのであれば、無理する必要もない。
②社会性の向上という面では学校に行った方がよいとは思うが、それで成長のマイナスになるのであれば、行かないという選択も十分あるのではないか。
③ヒトの親には子を育てる権利があるので、そのような先生にはわが子は委ねられないという親の権利を行使するとよいのではないか。何より本人が危機意識を持っている以上、学校に通わせる理由はない。
④親にも子にも拒否権があるということ。
⑤親が子育てにあせらないこと。
この5つ。
「学校に行かないことでのリスク回避」については、
①子どもどうしの関りや遊びは、放課後に友達が誘いに来てくれるのでそれでよしとする。
②勉強はオンライン授業もしくは一般の教材やYouTubeで補う。
③学校のことは新4年生になってみて、本人とまた考える。
ということで大人側は落ち着き、学校長もそれで納得した。
この決定に担任は校長の横でしきりに首をかしげていたそうだ。
教員になるに前に義務教育については、もちろん教育を受けているのであろうが、それすら忘れてしまっている担任の態度が冷静ではないことがよくわかる。
法律を持ち出さないと3年生の彼を導けない資質にも疑問が残るものだ。
「こっちが首をかしげたいわ」
と彼のおかーさんは、すっかり強くなって吐き捨てるようにそう言った。
つづく。