南が小学校を卒業した。
毎日無事に帰ってきてくれたことに感謝をする。
その厳かな卒業式の後に、何人かの男の子が好きな女子に告白をしたらしい。
南が夕飯の準備を手伝いながら話してくれる。
成功率0%。
全員振られたよ。
私はそれを聞いて何の関係もないのに全員ダメだったんだと、少しがっかりする。
一人の男の子は、無理ですという女の子にあまりにもしつこく、そこをなんとかと頼むので
「ピンクのブロッコリーがないのと同様に、この先私とあなたがつき合う可能性はありま千円」
とスマホに入力して彼の顔の前に突き出したらしい。
『スマホに書くってよっぽどいやだったんだね』というのは男子たちの感想。
そうしたら彼は「ピンクのブロッコリーっていう感性があなたの魅力なんだ」
とかいいだして、みんなに「もういいから」といわれながら退散させられる。
告白された女の子は、私の感性のカケラをかすめ取られたと、ご機嫌斜めになる。
この女の子にアタックして敗れ去ったのは本日2人目。
『可能性がないのに告白するなんて、アイツ玉砕しないと気が済まなかったのかな』というのも男子の感想。
「やめとけってみんなで止めたんだけどね」
と南がごはんをかきこみながら首をかしげる。
しかし、この悲惨な状況において、打率0割を払しょくするヒーローが登場する。
全校一足が速く、全校一背が高い男の子が、今しがた男子を2人バッサリ切り捨てご機嫌斜めな女の子に告白。
みんなへの事前連絡はなく、周囲が騒然とする中で、彼女は笑顔になりOKを出す。
2人は万雷の拍手と、まだ完成されてないかすれた指笛に祝福される。
いやいや相手が悪い。
男子の小中学生までは、足が速くて運動ができるというだけでモテる。
女子はカワイイだけで一生もてる。
『2人が振られるのを待っていたアイツの自信もすごいね』
『完全武装した兵士とピンクのブロッコリーでは勝負にならないな』というのは男子の感想。
人生の残酷さをいやというほど味わうピンクのブロッコリーは、それをみて中学校で頑張ると早くも立ち直りを見せる。
男子はそうでなくちゃ。
「OKもらったのはいいけど、その後どうするんだろうね。女子を好きだ嫌いだという気持ちがオレはよくわからない。あっ、カワイイとかならわかるよ」
と煮つけた魚の骨をとるのを苦労しながら南が話す。
☆☆☆☆☆
後日、南のおかーさんがママ友から聞いた話。
南たちが学校のグラウンドで遊んでいるところへ女子数人が登場し、南を責めたらしい。
式の後に待っておくようにと頼まれたたことを、南はすっかり忘れていてさっさと家に帰ってしまったそうだ。
その女子たちは、在学中に男子女子の仲を取り持ってきたベテランたち。
ママ友の女の子もその中に混ざっていたらしく、予想だにしない南の態度の扱いに困って家に帰ってからママにどうしたものかと相談したらしい。
なんと、式のあとで南に告白する予定の女子が5人も待機していたようだ。
「あの子にどうしてそんなにたくさん」とおかーさんはびっくり仰天して
「何がいいんでしょうね」と聞くと
「女子に全く興味を示さないところじゃないですか?、それに南君は結構優しいんですよ。私は、南君をうちの娘に勧めています」とママ友。
女子たちに誰に決めるかを迫られる南が
「よくわからないからお前たちで決めていいよ」とめんどくさそうに言う。
「そんなんでいいわけないじゃん」と憤る女子たち。
「じゃあ、みんなでじゃんけんして決めていいよ」と明るく言い放つ、何もわかってない南。
「カラダは大きいのですが、その辺の成長は遅くて、ホント―にすっかりと、なんっにもわかってないようなので許してやってください。ご迷惑をかけてすいません」とママ友にあやまっておいたそうだ。