南が6年生の卒業を間近に控えたある下校時のお話。
南のおかーさんとお買い物の帰りに下校中の南を発見。
南の話にちょくちょく出てくる、かわいいバスケット部の女の子と2人です。
いつもは男女混合で5~7人の集団ではしゃぎながら帰っているのに。
反対車線のビルの隙間の路肩に見つからないように車を寄せて、2人をしばし見学。
女の子は話すたびに背の高い南を見上げながら、ポニーテールを揺らしてうれしそうに微笑んでいます。
南はポケットに両手を突っ込んで、女の子の背の高さに合わせるように背中を少し丸めて笑顔で話をしています。
何を話しているのかな?
彼女を見る南の眼は優しい。
卒業を間近に控えてきっと感傷的な会話なっているのかな。
仲のいいかわいい恋人同士のようです。
蝶々になって肩にとまって話を聞いていたい。
私の頭の中には「小さな恋のメロディ」の主題歌「Melody Fair」が流れます。
☆ ☆ ☆
南のおかーさんと南の帰りを待ちわびます。
「ただいまー」と同時にウキウキしながら話の中身を訪ねます。
「人の皮をむいていくとどうなるかって話をしてたんだよ」と言い残してシャワーを浴びに浴室へ。
「へ?」と2人は顔を見あわせる。
<南から聞いた、いや、聞き出した会話を組み合わせて再現すると>
南「人間ってキャベツやタマネギみたいに皮をむいていくと、その人の本当の姿が最後に残ると面白いよねって」
彼女「へー、楽しそう、何が残るの?」
南「たとえばね、うちのとなりのおじさんってカバに似てるんだよね。そういう人はむき終わると小さなカバがでてきて「みつかったー!!」ってなると一目散に逃げていくの」
彼女「そうなの?。かわいいわね。じゃあ、南君のとなりのおじちゃんはカバに操られていたのね」
南「そうそう、カバにもいろいろあってね。刺青してる悪いカバとか、女子を好きなカバはピンク色だったり、威張っている人のカバはサングラスしていたり」
彼女「ねえ、カバしかいないの」
南「いや、いろいろだよ。カバに似ている人はカバが出てくるっていうだけで、ライオンだったり、チョウチョだったり猫だったりするよ」
彼女「そうか、だから猫が中に入っている人は猫が好きだったりするんだね。南君の中には何がいるのかなー」
みたいな話だったかなと、冷静沈着かつ支離滅裂に教えてくれました。
あんな素敵な光景の中での会話がカバって……。
淡い期待を裏切られて愕然とするおとな二人。
つまんないどころか、女の子と2人で帰っているのにそんな話なのかいって……。
その反動から、まーだあなたの中にはきっとお菓子の柿の種が一つコロンといるだけよと、おかーさんからいわれのない攻撃を受けていました。
私の「小さな恋のメロディ」はカバに食べられました。
'71年の映画「小さな恋のメロディ」の挿入歌「First of May」。
あとで、南が意図的に道路側を歩いていたことは、大いにほめてあげました。