i-class collection

ばーばと南 + Run&Music

オレは天才 ~ きみはオレが守る!!

南が小学校4年生の時のお話。

なにかにつけ「オレは天才」という男子が南のクラスにいました。

 

 

このタイプはどこの小学校にもいるようです。

各学年に1人はいるかもしれません。

 

 

南のクラスの男子はそんなことをいちいち咎めたりはしていないようです。

「アイツは困ったもんだ」

ぐらいで納まってきています。

 

 

しかし、その日の昼休のはじめ、そのバランスは崩れました。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

天才くんはなぜだか女子のグループの中に混ざって話をしていたらしく

バラ色の雰囲気に舞い上がったのか、「オレは天才だから」を乱発したようで

学級委員をやっている女子が業を煮やしてキレてしまったようです。

 

 

「天才ってなんのことだかわからないから、証明して」

と学級委員らしく元気にたずねました。

 

 

「見ててわからない?」

天才くんは背筋を伸ばして笑顔です。

キラーワードと言っていいでしょう。

 

1989年の日本シリーズの3連勝後のインタビューで

巨人はロッテより弱い

と言ってしまい、その一言で目を覚ました巨人にその後4連勝をくらった

近鉄のピッチャーを思い出しました。

 

 

 

「ぜんッ   ぜん、わからない。ナメてるの?」

学級委員は溜めに溜めたあと、キッパリとした強い口調で、彼よりも背筋を伸ばして反撃します。

 

 

「さすが学級委員!!」と男子の誰かが茶化すと、横目で学級委員に睨まれ

「スイマセン。スイマセン」と謝りますが、他の男子から頭を小突かれます。

 

 

蓮舫」というリングネームをもつ彼女には、だれも口ではかなわないことを知っている男子は、彼女が天才くんをどう追い詰めるかに興味津々なのです。

 

 

「いやいや、彼はここはまず引いておかないと、押しつけちゃまずいですね」

と男子の学級委員が冷静に解説をしてくれます。

 

 

 

男子の学級委員が言う通り、彼女に火がつきます。

「だから何がって聞いてるでしょ!!。根拠は何よ。示しなさい!!」

 

 

ここから天才くんは、作戦を変更します。

 

彼女に何を言われても

首をかしげて顔を彼女の前に突き出し

「は?、は?、なに?」

と聞こえないふりをします。

 

 

男子も女子もクラスで飼っている金魚もコオロギも

「ビンタが飛んでくる!!」

と思ったようですが、彼女は彼の両耳をつかんで広げたその前に口を持っていき

「説明しろって言ってんの。バカなの?」

と叫びます。

 

 

それでも天才君の人を小ばかにした態度は変わりません。

 

 

「平凡なヤツには天才のことはわからないんだよ」

と両手のひらを上に向けてヒラヒラさせながらその場を立ち去ろうとします。

 

 

その態度にあきれた学級委員は、彼の背中に向けて

「わかった!!。アナタさ、みーんながみんな自分の友だちだって勘違いしているところが天才なのね」

と言って女子の輪の中に戻って行きました。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

小学4年生の頃といえば、

男子は誰かが下ネタを叫びそれに過剰に反応し大笑いして、ただただ走り回っていれば、一日が過ぎる単純さと比べると女の子の精神状態は格段に複雑です。

 

同じ人間とは思えないくらい差があります。

 

 

「強かったね」と南たちはささやき合ったあとに

「根拠って何だろうね」と少し混乱したようです。

 

ここで男子の学級委員が

「お相撲さんのことです」

と教えてくれました。

 

 

「お相撲さん関係なくない?」

とみんなが疑問に思ったのですが、

昼休みにドッジボールをしていたらそんなことは忘れてしまったそうです。

 

 

だれ一人それは「そんきょ」だろと反論する者はいなかったので、

男子の学級委員がボケたのか、本当に間違えたのかは、

今となっては真相は闇の中です。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

その数日後、昼休みのドッジボールでも事件が起きます。

 

 

”天才くん”は学年で一番人気の女子の前に立ち

「オレが君を守る」といって、その子の前に両手を広げて立ちはだかったものだから、その子を好きな多くの男子は敵味方関係なく”天才くん”を標的にしたそうです。

どこからも飛んでくるボールをよけながら

「なんで見方が当てるんだよ。あっ!!、オレが天才だからか」

と相変わらずの安定感です。

 

 

ドッジボールで味方が味方に当てるなんて、わかりやすくて面白い子どもたちです。

 

 

読み聞かせで学校を訪問していたおかーさんたちが、

2階の教室からこの様子を見ていました。

 

先生が

「うちの小学校はみんなが優しいから、なんだかんだいじられながらも仲間に入れてくれるんでいいんですけど、中学校になったらイジメの対象になりやすいので気をつけないと」

とおっしゃっていました。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

”天才くん”は中学になってもその天才ぶりは変わらず、

周囲の忠告をものともせずに今のところ安定した生活ぶりののようです。

 

 

ただひとつ、守るべき対象が、

別の小学校から来たこれまた男子に人気の女子に移っていったようです。

 

 

同じドッジボールで守られていた一番人気の女子は、ホッとした半面

「なんか私が負けたみたいで複雑なんだな」

と腕を組んで南に感想を話してくれます。

 

 

「負けてるかなー?、オレは勝ってると思うよ」

と南が励まします。

 

 

「ありがとう。優しいのね」

彼女はそう言って、背伸びをして南の頭をなでて席を離れます。

 

 

「あなたそのときどうしてたの?」

と南のおかーさんが訊ねると

 

 

「ん?、じっとしてさせてたら、それを見ていた男子も、優しいねーって言いながらみんなで頭をなでに来て髪がぐしゃぐしゃになったよ」

と楽しそうに話します。

 

 

「なんか大人から見ると学校って色々な出来事が日々おこってて、楽しそうでいいねー」とおかーさんと話しているところに

 

 

「外から見るとそうかもしれないけど、当事者は当事者で色々大変なんだよ」

南の老成した意見です。

 

 

 

「まあ、そういう感性が優しいと言われてるのでしょうね。いいんじゃない」

おかーさんと納得したところです。