i-class collection

ばーばと南 + Run&Music

手乗りあしながバチと、お礼に来たカナブン

庭に10数個あるメダカの水槽にあしながバチが1匹、毎日水を飲みに来る。

個体を観察すると大きさとい模様といい、いつも同じハチのようだ。

 

私の周りを飛び回るハチに最初は大騒ぎしていたのだけど、

南が「じっとしてれば大丈夫だよ」というので

恐れながらも

「こちらにきてもいいことないからね。若くはないし」と言いながら

心臓はバクバクしながら動かないようにしていた。

 

 

南はハチが刺すことに無関心ないのか

「ノドが渇いたねー」などと、睡蓮の葉に止まっているハチに呑気に話かけながら顔を寄せていく。

 

「顔が近いわよ。さされないようにね」と心配していると

「大丈夫だって、なんにもしないよ」と平気でいる。

 

 

ハチが手に止まっていると言うのに、なぜそうやって冷静にいられるのかがわからない。

リスク管理ができていないのか、そうすることがリスク管理なのか。

 

 

ハチはそのうちにだんだんと南の近くに円を描きながら寄ってきて、ふわっと左手の甲に止まる。

というよりも、南が手を差し出してハチに止まるよう促したと言ったほうが正しい。

南は動ぜず「よしよし」と言って手を顔の近くにもっていって眺めている。

 

 

「このハチはうちがここに住みだした後に巣を作ったハチだから、いつも先輩はオレだぞって教えてるから何もしないよ」

と理解不能なことを言う。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

そういえば、この間もリビングのガラスに何度もあたっては、ベランダにひっくり返っている茶色のカナブンを見つけて

「カナブンがお礼に来たんだと思うよ。学校の帰りに道の真ん中で裏返っていたから、拾って公園の木につかまらせてあげたんだよ」

と突拍子もない話をしだした。

 

 

「何言ってるの?」

「カナブンがお礼をするわけないでしょ」

「冗談はいいから早く食べなさい」

 

カナブンを右の肩に乗せたまま、大人たちに相手にされない南。

 

 

「背中に黒い模様が一つあって、それと一緒だからあってるよ」

南は不満そうにご飯をかきこむ。

 

 

そんなことがあるのだろうか、背中の模様はみんな同じなんじゃないの、と思いながらも

「へーそうなんだ、すごいじゃん」と言うと

 

 

「もうひとつ、右側の足の先が少しだけ欠けていたんだよ。その場所も同じなんだ」

疑いもなく自信満々で話す南が嘘をついているようには見えない。

 

 

「住所を宅急便のようにかぎ分けてきたことがすごいよね。どうやったんだろうね」

とおかーさんが話をつないでみる。

 

 

「さっきご飯食べながらあのカナブン元気かなと思っていたから通じたんだと思うよ。ばーば、虫だってお礼くらい言うんだよ。言わなきゃできないのは人間だけだって」

と言ってごはんの4杯目のおわかりをよそおいに席を立つ。

 

 

おかーさんと目が合いお互いに首をひねる。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

私にはなにがなにやら全くわからない。

理解できるのは日本語を話していることくらいだ。

 

しかし、

ハチを手にのせたり、

魚釣りにいくと魚のいる場所をうまいこと探しだしたり、

目が合えば共食いするザリガニを60cm水槽に9匹も入れて3年間で3世代を育てたり、

カブトムシを6匹から300匹に増やしたり、

ケガしたひばりを拾ってきて手乗りにしたり、

家族以外には吠えまくるお隣が飼っているトイプードルをいきなり抱っこできたり

トンボを肩に乗せたまま5kmのランニングをしたりと

虫や動物を苦も無く手なずける彼が言うのだから、そうなのかもしれない。

 

 

「カナブンがお礼をいいにくるなんて、素敵な中学生になったのね」

と褒めた。

 

 

5杯目のご飯を食べ終えた彼は、2階の私の部屋でエクソシスト 信じる者」のビデオを見たいと言う。

「どうぞいいわよ」と言うと、

リビングにいた私に「ばーばも一緒に来てよ」と言う。

 

「一人で見れないんでしょ」と茶化すと

「だって、こわいじゃん」と正直に答える。

 

「だったら見なければいいじゃん」

「そういうわけにはいかないんだよ」

 

「食器を片付けたら行くから先に行ってて」と言うと

「待ってるから」と言っておとーさんと腕相撲を始めた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

エクソシストの恐いシーンになると、

「終わったら教えてね」

と言って南は目をつぶっている。

 

そのうちに静かになり、私のベッドで寝てしまった。

 

 

ふと気づくと窓に虫の当たる音がする。

カーテンを開けてみると、先ほど外に放したカナブンが網戸にはりついている。

 

 

寝ている南に

「さっきのカナブンが来たよ」と言うと

「知ってる。夢に出てきた」

と目をつぶったまま答える。

 

 

きっと寝ぼけていて、わかっていないのだと思ったけれど、

これまで南が話したことは本当かもしれない、いや、本当だと思ったほうが素敵だなと思い直す。

 

 

 

いい夢の続きが見れるように、部屋を薄明りにして、網戸側のカーテンを開けたままにしておいた。