i-class collection

ばーばと南 + Run&Music

「子どもの心をもった女性」はいないが、「子どもの心を持った大人」といいたい男性はたくさんいます

君たちはもう大人の一歩手前なのだからといったかと思えば

 

まだ子供だからという。

 

 

子どもたちはその言われ方に憤慨しているけれど、世間に都合よく「扱われる」のが中高生。

蝶のさなぎと同じで中途半端な時期は、まあそういうこともありますって。

 

 

あなたたちは、まだ逃げ場があるのですよ。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

大人になったらなったで、単に大人になるのではないのです。

「いい大人」のくせにと、「いい大人」でもないのに「いい大人」と定義づけられてしまい逃げ場がなくなってしまいます。

 

 

大人とは逃げ場のない人のことをいいます。

待ったなしなのです。

 

そのいい例が、犯罪を犯したら前科が付きます。

 

 

大人はすべて「いい大人」でないと認めてもらえません。

大人はつらいのです。

 

 

ピーターパン症候群と揶揄されないためにも、大人の男性が子どもっぽい遊びをするときは、「子どもの心を持った大人」という自由な表現を使って世の目をくらまします。

 

男性の「いい大人」を薄めるための努力は絶え間ないものです。

 

 

「子どもの心をもった女性」は地球にはいません。

だから、女性からしてみれば、「それってなんなん?」って思うのですが………。

 

 

それはそれでどこか、かわいらしさもあり「まあいっか」ともなります。

そうでないと、ジブリの映画はこの世に出ませんでした。

 

 

 

そもそも「いい大人」って過去の歴史を見ても孔子老子くらいなものでしょ。

「いい大人」の生成は無理だってことです。

 

 

 

だいぶ脱線したので、子どもたちに話を戻すと、

子どもたちは、さなぎ時代の混沌としたどうにも整理のつかない精神状態を考慮して、教育に取り組んでもらいたいと思っているでしょう。

 

 

成長過程に理屈は通じません。

伝わるのは「想い」と「祈り」だけだと思ったほうがいいでしょう。

 

 

しかし、大人というのは、君たちと同じさなぎ時代を通過した折に、同様の苦悩はしたにもかかわらず、それをすっかりさっぱり簡単に忘れているのです。

 

 

大人を国会で証人喚問したら、きっと「記憶にございません」と答えますよ。

 

 

「いい大人」はこの世にはいないのですから。

 

 

カメムシは嫌いだ!!!! ~ 死のドライブ、決して負けられない闘い

カメムシは嫌いだ!!。

 

だって、臭いから。

見ただけで吐きそうになる。

 

レジに横入りする人よりも大差で嫌い。

 

 

買い物から自宅へ帰ろうと車に乗って数秒後、ダッシュボードの奥に何やら緑色の動く物体が。

 

イヤな気がしたけれど、

そうでなければいいなと思っていたけれど、

そうでありませんようにと願ったけれど、

そうではないよねと納得させたけど、

神さまそうでありませんようにと祈ったけど

来年から初詣に行きますからと誓ったけれど

 

やっぱり、そこには絶望が……。

 

 

 

カメムシが、「本日は大変お忙しいところを……」と言いながら現れた。

そう、私は点滴、いや天敵のカメムシと意思疎通ができるのだ。

 

いや、できんわ。

 

 

 

私は、カメムシには優しくできないだけでなく、殺意も持てない。

 

私の前世はカメムシにいじめられたに違いない。

もしくは大量のカメムシを捕食しようとしたカマキリだったのかも。

 

 

小学生の頃にカメムシを飼っていて、カメムシ臭をまき散らしている男子が私の隣の席になったときは、もうほんとうに吐きそうになって頭が痛くなったし、生まれて初めて人を呪った。

 

 

ここから、私とカメムシの壮絶で長い「決して負けられない闘い」が始まる。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

ダッシュボードの奥からトコトコ歩いてきたカメムシダッシュボードのカーブの頂点でピタッと止まって動かなくなる。

目の前の私をしっかりと認識したのだ。

 

 

 

そうそう、呼吸を整えるときはまずは息を吐くんだっけ、それとも吸うんだったっけ、と思考も定まらない。

 

 

脈拍はネコを前にして見上げているネズミのレベル。

 

そして目が合う。

 

「なんで君は密閉された車内にいるのかな?」と落ち着いて聞いてみる。

彼は寡黙なタイプの様で返事はない。

 

 

「見つめないで。私はあなたのこと嫌いよ」

 

 

怒らせてしまったのか、降りていた触角が徐々に上がって上を向く。

羽を少し広げて飛ぼうとする。

 

それって戦闘態勢じゃん。

困ったもので、ことばを持たないものはすぐ腕力に訴えようとするのよね。

 

 

でも、ちょっとまって。

 

嫌いといっても、好きか嫌いかと言われたらといったレベルで、心から嫌いというわけでもないの。信じてくれるかな。いまさら信じろと言われても無理かもしれないかもしれないけれど。女心は揺れ動くものなのよ……。そう、あれはやっぱりジョークなの。どちらかと言うとその緑は好きなほうよ。その緑、セクシーでいいと思うわよ。カマキリの緑よりは断然イケてるわ。絶対よ。セミの茶色なんかよりはよっぽどカッコいいと思うわよ。自信を持ちなさい。そういえば、思い出したわ。うちは代々、ひーおじーさんのときから緑が好きだったのよ。ほんとうよ。なんだか、心が落ち着くというか、ほらわかるでしょ。私は明日、髪を緑に染めようかと思ってるくらいなんだから。ねっ、わかったら落ち着いて羽をたたんでごらんなさい。

 

カメムシ語を脳内で駆使して教育かたがた語りかける。

 

いや、伝わらんわ。

 

 

交渉むなしく、カメムの触角がさらに真上に上がる。

なぜ触角を上げるかな。

 

 

 

本当になにもしませんからね。

私は運転しているからホールドアップはできないのよ。

羽を閉じてとにかく待ってね。

 

 

どうでもいいけど、こっちに向かって飛ばないでね。

そうなると、運転している私だけではなく、あなたの命も危ないわよ。

 

 

ねっ、話し合えばわかるから。

いや、話し合ってもどうにもならないことだってあるって誰か言ってたけど、こういう場合はきっとなんとかなるわ。

 

 

いいこと、あなたがこちらの領域に潜入してるのよ。

落ち度はあなたにあるのだからね。

 

 

あ、責めているのではないのよ。

責任の配分を教えているだけよ。

 

 

いいわ、反省しなくてもいいから触角をさげて、戦闘モードを解きなさい。

 

ありとあらゆる説得工作を試みるもカメムシは戦闘態勢のまま動かない。

 

 

 

暴力的な

私は死ぬまでは身に着けないと決めた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

自宅まで5kmほど。

途中に大きな交差点を右折するのだが、カメムシを刺激しないようにと考えていると、からだが反応せずにハンドルを切れずに通り過ぎてしまう。

 

自動運転モードに切り替え、バイパスをひたすらまっすぐに、ひたすらじっとして直進する。

 

 

赤色灯を回したパトカーがカメムシに脅されている私を無視して、反対車線を通りすぎる。

なにやってんのよ。善良なる市民がカメムシに脅されているのよ。

 

 

カメムシの前には警察権力も無力だ。

いや、カメムシをペットと思っていたのかもしれないわ。

 

 

気を静めて、南のおとーさんに車内から電話する。

留守電。

肝心な時になにしてんの。

 

すぐに気持ちを切り替えて、南のおかーさんに電話をしてみる。

 

 

「はーい」と明るい声で南がでる。

「おかーさんは」

「運転中だよ。車のスピーカーで話してるよ」

カメムシが車の中にいるのよ」

「えーっ。だめじゃん」というおかーさんの叫び声が奥から聞こえる。

 

 

「目の前にいるのよ。もうね、羽を広げて今にも飛んできそうで」

「カメちゃんとか、名前でも付けてあげたら」

 

 

「あのね、いい、そういう余裕はこれっぽっちもないのよ。そういう態度は女の子にもてないわよ」

「握って窓から逃がせば?」

 

 

「できると思うの?」

「ムリかな」

 

 

「人にアドバイスする時は少し背伸びしたらできるぐらいのコトを伝えるのがコツよ」

「わかったよ。そういえば、この間、野球の練習で使った紙コップが確かダッシュボードに積んであるあるはずだから、それをかぶせたら」

 

 

「ありがとう。頑張ってみるわ」

「ばーば健闘を祈る」

「ほんとうに祈ってね。世界中の神様に祈ってね」

「バイデンにも、プーチンにも祈っていおくよ」

 

 

私の危機感は、「カメムシ&ゴキブリ同盟」を結んでいる南のおかーさん以外、地球上の誰にも伝わらない。

 

 

 

紙コップをかぶせようとしても、フロントガラスのカーブが邪魔をしてかぶせることができない。

 

 

「なんなの。ぜんぜんだめじゃん!!」

 

 

今年一番の無力感を抱えながら再度、電話。

再度、南が出る。

 

 

「どうだった?、カメムシうまくいった?」

「ムリよ。どうしよう」

 

 

ティッシュでつぶしたら」

「嫌よ。カメムシのくさい匂いがつくじゃない」

 

 

「オレは家の中にいるカメムシを手で握って逃がしたよ」

「あなたはできても私は、絶対無理!!。140㎞のボールを打てというようなものよ」

 

 

「石鹸で洗えばいいじゃん」

「ぜーーーーーったい、いやーーー」

 

 

「この会話はカメムシも聞いてるの?」

「車のスピーカーで話しているから聞いてると思うわよ。どうして?」

「聞いてたら音量を上げてもらって驚かそうと思って」

「だめよ、だめだって。変に刺激しないでよ」

 

 

「わかったよ。何もしないよ。ついたら処理してあげるから。なんとか頑張って早く帰っておいでよ」

「わかった。頑張って帰るわ」涙目で答える。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

家まであと300m。

こういう時に限って道路工事中で片道が封鎖でされている。

 

憤っているところにカメムシダッシュボードの奥に姿を消した。

 

今だ!!!!!!。

今よ!!!!!!。

ほら、に変わりなさい!!!。

 

 

壊れてるんじゃないかと思うくらい簡易信号が長く感じる。

 

普段は徳川家康なみに信号を待てるのが特技の私だけれど、

今日ばかりは織田信長ばりに「変えて見せよう信号機」と気持ちはあせる。

 

 

カメムシの位置も奥に移って変わらない。

信号を無視しようかと思ったが、韻を踏んでいる場合ではないと思い直す。

 

 

 

神さま、初詣どころか、毎月1日と15日もちゃんとお参りに行きますから、信号を何とかしてください.

 

ついでにカメムシ君をおとなしくさせておいてください、とバーターを持ち出す。

 

 

バーター成功。

神さまの気が変わり、信号が変わる。

になるや否や急発進でスタートしたい気持ちを押さえに押さえつつ、おしとやかに車を出す。

 

車が揺れないように徐々に加速しながら、急いで帰宅。

 

 

すぐに車から降りて、「ついたわよ、みなみ----!!」と携帯で事務連絡。

 

 

玄関から飛び出してきた南が「どれどれ」と言いながら、ティッシュを持った右手でカメムシをさっと捕まえて草むらへ逃がす。

 

 

カメムシ騒動は一段落つく。

南にお礼を言うと同時に、どっと疲れがでる。

 

どこから入ったのだろう。

疑問は尽きないが、もうカメムシのことは考えたくないので追及はしない。

 

 

カメムシの匂いがからだ中に着いたような感じがするのでシャワーを入念に浴び、無事に家に着くことが一番幸せであることを感じながら、南のおかーさんが入れてくれたコーヒーをありがたくいただく。

 

 

 

カメムシ騒動記はこれでおわりだけれど、ここまで31回もカメムシと連呼している。

画面からカメムシ臭がすると思いますが、なにとぞご容赦ください。

 

 

 

「KOBAN」って外国の人に通じているのでしょうか

交番の表には「交番」KOBANの2つの表記があります。

KOBAN」で外国の人にとってわかるのだろうか。

 

 

有識者が集まって「交番のローマ字化会議」で侃々諤々の議論の末に「KOBAN」となったのだろうか。

 

 

そのときに、小判のことは考えただろうか。

 

 

そりゃあ読めますよ。

読めたからって何をするところかわからないなら意味がないじゃん

と思いませんか。

 

 

交番は日本独自のすぐれた機能です。

外国にはありません。

 

外国人向けに親切心で書いているのなら機能性を表示すべきです。

「POLICE」か「POLOCE OFFICE」って。

 

 

そして、「こーばん」っていわないでしょ。

ひらがなだと「こうばん」って書くでしょ。

 

 

 

それとも、私が決定的なところで何か間違っているのだろうか。

 

 

RUN & MUSIC ~ Hamilton, Joe Frank & Reynolds「恋のかけひき(Don't Pull Your Love)」 ,The Original Caste「天使の兵隊(One Tin Soldier)」,Bobby Vinton「Mr.Lonely」など多数のヒット曲を作った「Dennis Lambert & Brian Potter」にスポットを当てる

日差しは春なのに、あきらめの悪い冬の冷たい風がやっかいで

何をどう着て走ればいいのかまったく悩む。

 

走り出すとすぐにガーミンが選択したのは

Hamilton, Joe Frank & Reynolds「Dasy mae」

こんなにいい曲を私は何十年も置き去りにしていたのだ。

この偶然が心の扉を解放する。

記憶は一気に70年代へ。

出会ってしまった音楽が次々に思い出される。

サンキュー、ガーミン。

 

 

小学生のころに遊びに行った、いとこのお姉さんの家にあった

The Original Caste「天使の兵隊(One Tin Soldier)」に衝撃を受ける。

宝を奪った兵隊の話がどうしたら「天使の兵隊」になるのだろうかと。

Hamilton, Joe Frank & Reynolds「恋のかけひき(Don't Pull Your Love)」

とついでに井上陽水「断絶」も教えてくれた。

 

守備範囲の広さに憧れる。

私はお姉さんの甘い匂いのする部屋にこもって

午前中の陽だまりの中でこの3枚のレコードをずっと聴いていた。

 

走りながら、Dennis Lambert & Brian Potterの作った曲たちを思い出してみる。

急いで5kmを走り終え、シャワーを浴びた後で彼らのリストを作る。

昼食を作りながらYouTubeで聴いてみる。 

 

☆ ☆ ☆

 

 

知ってますか。このソングライター・チーム。

曲を聴けば聞いたことがあるものばかりでしょうが、誰が作ったかまではなかなか知られていないようです。

 

車のデザイナーを気にして車に乗る人は、ポルシェのオーナー以外にはそうそういませんからね。

 

 

Hamilton, Joe Frank & Reynolds「恋のかけひき(Don't Pull Your Love)」

The Original Caste「天使の兵隊(One Tin Soldier)」「Mr.Monday」

Bobby Vinton「Mr.Lonely」

などをはじめとする多くの名曲を世に送り出しながら、フランス文化のように認知度は今一つ。

 

YOASOBIの足元にも及びません。

 

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1960年代から1970年代までに、ブルーアイドソウルを基調にポップでソウルな耳障りのよい曲を多数ヒットチャートに送り込みました。

 

 

「Lambert &Potter Works」が出たら絶対に購入するのに、でていません!!

だれかレーベルを超えて彼らの偉業を整理してほしい。

 

 

過去に「Tommy Lipuma Works」という素晴らしいアルバムを作り出した日本独自の企画でどうにかならないかなと切に思います。

 

 

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Dennis Lambert の1972年のソロ・アルバム「Bags &Things」も日本でCD化されましたが今や廃盤です。

でも、良い時代になりました。

YouTubeでフル・アルバムが聴けます。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

Dennis Lambert & Brian Potterのランチタイム・年代別プレイ・リスト、30曲。

どの曲も小憎らしいばかりによくできていて、懐かしく私に寄り添ってくれます。

すべてYouTubeで聴くことができます。

毎度のことながらいい時代になりました。

 

 

  1. Mystery Train / Elvis Presley (1955)
  2. Sailor Boy / Sherry Sisters (1964)
  3. Mr.Lonely / Bobby Vinton (1964)
  4. Just Out Of Reach / The Zombies (1966)
  5. Someday Oneday / The Seekers (1966)
  6. So You Want To Be A Rock'n'Roll Star / The Byrds (1967)
  7. One Tin Soldier / The Original Caste (1969) 
  8. Mr.Monday / The Original Cast (1970)
  9. Leaving It All Behind / Original Caste (1970)
  10. Don't Pull Your Love / Hamilton, Joe Frank & Reynolds (1971)
  11. Mr. Bojangles / Nitty Gritty Dirt Band (1971) 
  12. Daisy Mae / Hamilton, Joe Frank & Reynolds (1971)
  13. Two Divided by Love / The Grass Roots (1971) 
  14. Ain't No Woman (Like the One I've Got) / Four Tops (1972)
  15. Bags And Things / Dennis Lambert (1972)
  16. Mama's Little Girl / Dusty Springfield (1973) 
  17. Ashes to Ashes / The 5th Dimension (1973)
  18. Dream On / The Righteous Brothers (1974) 
  19. Look in My Eyes Pretty Woman / Tony Orlando & Dawn (1974)
  20. Put A Litle Girl / Emotions (1974)
  21. Dream On / The RIghteous Brothers (1974)
  22. It Only Takes a Minute / Tavares (1975)
  23. Yesterday Can't Hurt Me / Evie Sands (1975)
  24. Look In MY Eyes Pretty Woman / Tony Orland & Dawn (1975)
  25. Once a Fool / Kiki Dee (1976)
  26. Country Boy / Glen Campbell (1976)
  27. The Bottom Line / Glen Campbell (1976) 
  28. Fly Away / John Denver (1976)
  29. Why Do People Fall In Love? / Tony Bennett (1986)
  30. Nothing's Gonna Change My Lover For You / Glenn Medeiros (1987)

 

 

二人の作詞作曲ではありませんが、デビューシングルで全米ナンバー1をとったAORの名曲Player「Baby Come Back」は彼らのプロデュースです。

 

映画『トランスフォーマー』で使われたときは、おおいに驚いたものです。

 

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子どもたちへのかかわり方 Part7 ~ 校内に悪役をつくらないためにも古典文学を読む

南のクラスにはちょっとした係を決める際に、いつもきまって手を上げる男子と女子が一人ずついるそうです。

 

音楽会の指揮者を募ったときにも、さっとその2人が手を上げて生徒間では一件落着となったのですが、先生からクレームがつきました。

 

 

「いつもこの2人にやらせてばかりでみんなはどうも思わないのか」

という理由です。

 

「先生はそんなクラスだとは思わなかった。悲しいことだ。みんなの自信は中学に入って1年間で育まれなかったのか」

と大げさに突き放されたみたいです。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

納得がいかないのは手を挙げないその他大勢です。

昼休みにクラスの真ん中に集まり、不満をそれぞれが口にだします。

 

 

まず、やらせてないし、押しつけているわけでもない。

自分たちからやりたがってるんでしょ。

内申点が上がるから」と言って本人がやってるんだから別にそれでよくないか。

私たちってそんなに悪者なの?

「そんなクラスだと思わなかった」って、どんなクラスなの?。見てなかったの?

そんなクラスの担任はだれよ。

動機が不純でもやるって言うんだからそれでよくない?

それで回っているのだから別にいいじゃん。

体育のサッカーのゴールキーパーはオレたちが順番にやってるのは知らないくせに。

あいつ、先生の前ではいい格好するからね。

 

なんでもかんでもハイハイ手を挙げるのは、逆に自信の無さの裏返しでしょ。

女子の学級委員の意見は鋭く冷酷に核心を突き周囲を感心させます。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

南の学年の先生たちは、対立構造をわざわざ作りたがるようです。

タバコ事件のときも吸った側も悪いけど、吸ってない方も注意しないのが悪いといったように。

 

今回も結果的に

  ①手を挙げる子 vs 手を挙げない子。

  ②先生 vs 手を 挙げない子。

の2つの対立構造ができました。

 

 

ハリウッド映画ではないので、学校内に悪役をつくる必要はありません。

 

 

校内で起こること全てに事象において、相対的な採点基準をもって生徒に接する方法論には無理があります。

 

社会は白黒であることの方が稀です。

 

 

先生たちの行動は学校内にほぼ限られ、まだ一人前になっていない子どもたちと何年も過ごすので、社会にもまれる機会に恵まれません。

 

学校や公務員の外の世界は、思っている以上に複雑で広く優位差を求めるあまりに混沌とし、あっという間に手の平を返す社会です。

 

そこでは今何が起こっているのかについて先生たちは個別に勉強をしていかないと、どうしてもきれいごとで片付けようとする片寄った考えになりがちです。

 

 

でもそのような社会を理解しろといっても当事者ではないことから、相当に難しいことかと思います。

先生は生徒たちに常に当事者意識をもてと言いますが……。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

最後に学力は学年でもトップクラスの木村君がこういいました。

 

「思ったことを口に出していいわけではない。先生のそう思うということが、いつでも本当にそうであるとは限らないのだから」

 

 

みんなはさすが木村君と感心するなかで、彼の話はさらに続きます。

 

「そこが、いつもぼくたちが考えろと言われているところだ。それには言葉の価値が大事なので本を読まなければならない。言葉の価値に接するには古典文学が必要なので、えーと……………」

 

 

 

木村君がいつもの演説モードに入ったので、南たちがそこは止めたそうです。

 

 

 

 

「さあ、次の役決めのときが楽しみね」と私が南の意見を求めると、

「同じだよ。やらせとくよ。オレは内申点なんていらないし。何点もらうか知らないけど少しの点数のために自分を殺すことはしない」

少し冷めた大人の返事が返ってきます。

 

 

「でも、また怒られるかもしれないね」

「ほおっておくさ。おとーさんもそれいいんじゃないって」

 

 

 

中学1年生。

日々のいろんな出来事に翻弄されながら、自分なりに出口を見つけようとしています。

お友だちと一緒に意見をぶつけ合っているところが素晴らしいと思います。

 

 

こういう人と人がぶつかりあうリアルな体験の積み重ねは、人の心を強くし、優しくします。

これはデジタルだけの教育では到底できないことです。

 

 

でも木村君の言う通り、本当に古典文学は読んだ方がいいかもよ。

 

 

 

ヘディングを真上に飛ぶ人とは、おつきあいできません!!

といわれて、ユキナリはふられたんだよ。

 

 

南は最近、帰ってくるなり玄関先で今日あったことを話し出す。

 

 

 

シャワーを浴びて濡れた髪の毛を片手で拭きながら

「言い方がひどくない?」

といいながら、空いた方の大きな手でおにぎりをほうばっている。

 

 

 

 

ばーばはわかる気がする。

ユキナリ君には悪いけど、ばーばもそう思うタイプだから。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

私の中学校時代はまだJリーグはなく、サッカー人気は低迷中だった。

それでも日本中で静岡だけがブラジルに敬意を持ち、大人から子どもまで(決して子どもから大人までではない)の全世代でサッカーを真剣に過激にやっていた。

 

スポーツ店に行けば、店舗面積の8割はサッカーに関する売り場で世界中のメーカーが揃っている。

その他のスポーツ道具は残りのスペースに、置いてあげる風で陳列してある。

 

 

練習開始時にコーチが仕事で遅れても、元サッカー経験者や今でも現役の親ばかりなので、なんら困ることはなかった。

 

 

 

 

 

その中でも、私が住んでいたのは静岡の中でも圧倒的にクレイジーな地域だった。

 

当時強豪だった国見高校(長崎)の蹴って走りまわってパワーで押しまくるサッカーを正当なサッカーとして認めず「パスサッカーのみがサッカーである」との片寄った考えを持つ大人たちは、春夏の甲子園にはまったく興味を示すことがなかった。

 

 

スーパーのレジのおばちゃんからして、地域の少年団や地元の高校の戦績に一喜一憂し、パスサッカーの戦術を語った。

 

 

そのような土壌の中からカズや隣町にいた小野伸二沢登や名波や川口能活らがはばたいた。

 

 

毒気を抜くワクチンはない。

 

 

感染力の強いその熱は子どもに伝播するので、女子たちにとってサッカーをやっていない男子は恋愛対象とはならなかった。

 

 

男子たるものサッカーをやるべし、といった風土の中で、サッカー部以外の子と付き合うのは至難の業だ。

 

 

「彼は野球部でこの間優勝したの」みたいな話を絶対に父親の前でしてはならない。

家族同士は断絶し

「大谷君、あなたはどうして野球部なの?」と二階の窓から月に嘆くしか術はない。

 

 

そもそもサッカー以外での優勝なんてなんの価値もないと思っているし、野球はサッカー人口を奪う悪のスポーツだとして思って勝手にダースベーダのように敵視していた。

 

 

 

もちろん女子ばかりの家でも、おとーさんのサッカーボールが家に1個はあったので、バスケットをやっていた私でも小学生でリフティングは200回できた。

 

となりのおじいさんは、頭でリフティングしながら30メートルほど歩いて見せて、みんなの悲鳴とともにバス停にぶつかり血だらけになって、病院に運ばれたが髪の毛がハゲるという理由で縫合拒否をし、おばーさんに怒らながら再度病院に連れもどされ7針縫った。

 

 

そんな片寄った育ちかたをしたので、この年齢になってもヘディングができないなんて論外だ、といびつに思ってしまう。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「マサイ族みたいなジャンプ力で上にヘディングできたら、結果は違ってたかもね」

追加のおにぎりを握って南に渡す。

           

 

「入れたらクラスマッチの優勝が決まるところだったんだけど、どフリーであれだったんだよね」

 

 

 

きっとはずしかたの問題というより、優勝のかかった決定的な場面での勝負弱さが彼女の逆鱗に触れたんだろう。

 

 

きっと、彼女のご両親かおじいさんかおばあさんかその遠い祖先には、静岡の血が入っているはずだ。

 

 

ピアスの穴と手のひらの豆は、たたかう勇気の証

①一流のモデル

②プライドを勘違いしている男たちから、正当にお金を稼ぐ

③一番になれる人を支える人

 


将来の夢を3つ書きなさいという授業で、学年でも10番以内に入る学力の女の子が書いた夢だ。

 

 

先生の評価は、②はあまりすすめしないとのこと。

先生の立場からすればそうだろう。

 

 

そういわれた彼女は

「先生のアドバイスはありがたいのですが、私の未来は自分で決めます。そのために今日を過ごしているのです」

ときっぱりと言った。

 

 

少し茶色がかった肩まである髪はリンスのコマーシャルに出てくるように一本一本がサラサラで、13歳にしてすでに大人の雰囲気を漂わせる彼女は、普段から口数が少ない。

 

複数の中学校から生徒が集まる塾を通じて、その美ぼうは広く行きわたり複数の中学校の男子が、PKを軽く蹴るように告白したが成す術もなく数秒で玉砕している。

 

塾を通じて男子たちは学ぶ。

もうPKを蹴ろうとして手をあげるものはいない。

 

 

 

その彼女がきっぱりと意見を言うのを初めて聞いて教室はどよめいた。

 

 

そして、その日の階段の掃除当番は学校行事の係に人を取られ、南とその彼女の2人だけになった。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

「2人じゃ終わらないね。サボっちゃおうよ」

モップを片手に彼女が微笑む。

 

 

「おまえ、しっかり将来を考えていているんだな」と同調する代わりにモップにアゴを乗せた南が感心する。

「そうかな、南君ほどではないわよ」と彼女が返す。

 

 

 

「オレは②番に感動したけどな。よくあんなすごいこと書けるよな」

「何をしたいかって具体的にはないのよ。モデルをやらされてるとそういう大人たちがよってきてウザイの」

 

 

「モデルの世界って、居心地はどう?」

「めんどうくさいけど、楽しいよ」

 

「緊張感がすごそうだね」

「でも、楽しいわよ。緊張の無い場所なんてなにも楽しくないでしょ。南君もそうでしょ。いつもみんなに見られて緊張の中で投げてるから楽しいんでしょ」

 

 

「しっかり考えているんだな」南が感心していると

「ねえ、南君は野球で優勝したことある?」と彼女が話を変える。

 

「あるよ」

「いいなー。私は一番になったことがないわ。本当は③が収まるところだったりするのかもしれないわ」

 

 

「ショーにはでたりするの?」

「一応、何度かね」

 

 

「そうか、すごいんだな。きっと一流のモデルになれるよ」

「そうだといいけど。モデルになるにはもっとメンタルを鍛えなければならないの。みんなバチバチで、前へ前へのアピールがすごくて……。私はそういうのが苦手だから今日は先生にちゃんと意見を言おうと思ったの。そこは私のテリトリーだから、入ってこないでって」

 

 

 

「うちの学校の中で先生も含めて、おまえが一番何が大事かをわかってると思うよ。みんなフラれるはずだな」

「未来を想像するのは、いまやるべきことがはっきりするから楽しいわ。私はモデルになるから南君は希望通りにプロ野球選手になってね」

 

 

 

 

掃除道具を片付けながら髪をかきあげた彼女の耳には、小さな穴が空いている。

 

南がハッとしていると、視線に気づいた彼女は

「悩みや矛盾や葛藤を抱えたままゆううつな世界に飛び込んでいくときに、お化粧を済ませて最後にピアスを付けたら、そういう邪念をシャットアウトしてくれるから大丈夫やれると思うの」

と軽やかに話してくれた。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

いつものように南の、主語がなく時系列の乱れた、拙すぎる説明を整理してカッコよく書くとこうなる。

私は、南の話を聞いていろだけで楽しいので、そこをなおそうとはしない。

 

 

南は、身近に自分の夢とたたかっているヤツらは多いけど、彼女は別格だと言う。

 

 

 

私が「どこが?」って南に聞くと

「欲の恐さを知っているから」とそこはきっぱりと哲学的に答えた。

 

 

抽象化と分析力がすごい。

それだけできるんだから、もうちょっと話かたはどうにかなるんじゃないと心で思う。

 

 

「彼女は、先生たちも想像できない彼方遠くで闘っていて、オレたちがやっていることはまだまだママゴトだったことが分かった」とも付け加えた。

 

 

 

 

「あなたの野球はママゴトだったの?」とたずねると、

「ほどほど」かなと答える。

 

 

「ふーん。野球は好きなのよね?」と再びたずねると

「ほどほどかな」と同じ答え。

 

 

「でも普段努力してるじゃない」

「ほどほどにね」

 

 

「一生懸命じゃないの?」

「ほどほどに一生懸命だよ」

 

 

「なにそれ。ほどほどばっかりじゃん」と言うと

「まだ今じゃないってことだよ」と優しく笑い返す。

 

 

☆ ☆ ☆

 

 

両手を頭の上にあげて寝ている南の手を毛布の中に入れて寝室から戻ってきたおかーさんが、南の手の平の豆が分厚くなっていることに驚いている。

 

 

「まだ、ほどほどらしいわよ。今じゃないんだって」

というかどうか迷って心にしまっておいた。

 

私も「今じゃない」と思ったので。