南が5年生の時のお話。
授業参観日に南のおかーさんが出席しました。
担任の先生が忘れ物を思い出し、急いで職員室を往復すると息が上がっていました。
「昔はこんなことはなかったのに、もうこれ以上は歳を取りたくないな」と嘆いたそうです。
「先生、若いまま歳を取ったら気持ち悪いよ」
「歳相応でいいなんじゃない」
「運動したら復活するよ」
「昼休みに一緒に走ろうか」
子供たちはそれぞれに慰めます。
「先生は運動が苦手だから、このままでいいわ」
息を整えながら先生は授業の準備を進めます。
「放置したら劣化するじゃん」男子が無遠慮に声を発します。
「あーっ、劣化って女性に失礼よ」女子がいさめます。
「じゃあ、老化か」男子たちは容赦がありません。
「老化も劣化も先生には禁句です。はい!、授業を始めますよ」
堅苦しい授業参観の始まりが笑いで包まれたおかげで、その後は活発な授業となりました。
とるに足らない話がどんどん広がり、生徒たちが掛け合いのように自由に発言する様子を見ていると、クラスの雰囲気の良さが手に取るように分かり、おかーさんはとても安心したようです。
☆☆☆
人は変化を恐れるといいます。
子供たちが言うように変化しない方が怖いのに。
変化せずに社会に受け入れられるのは「サザエさん」だけです。
美容室の先生が
「歳相応に綺麗さと品の良さをまとっていって、今に自信をもっている人がかっこいいと思います」
と常におっしゃいます。
それを聞いて私は白髪を染めるのをやめました。
潔く歳に抗わない事に決めました。
すると、少し背筋が伸びたように感じます。
それも気持ちの問題ですが、そこが大事です。
変に抗うことのかっこ悪さを美容室で教えてもらいました。
歳相応の品の良さ。
いったいどうすれば……。
美容室に行くたびに、髪を切りに来るかっこいい高齢の女性をよく見かけます。
ひとりひとりインタビューするわけにもいきません。
私にはマイナカードなみの難題です。
と言ってる間に歳をとり続け、よけいに焦る日々に抗っています。