地震対策として、TVをベルトで台に固定しようと南のおとーさんが市販のグッズを買ってきた。
ミリ数の違うネジがいく種類か入っている。
ネジが液晶に突き抜けないように、適正なミリ数をメーカーに確認してくださいと書いてある。
おとーさんがすぐにSONYに電話をしてみる。
なかなかつながらない。
全然つながらない。
パスタならとっくに伸びて気を失いそうになっているころに、やーーーっとつながって、用件を簡潔に話す。
南のおとーさんはいつも拡声モードで話すので、家族みんなが聞いている。
電話に出たおばちゃんは
「SONYの純正のベルトを使ってください」と事務的な対応。
「はい? 純正ベルトの話はしていません。市販のネジのミリ数を聞きたくて電話しています」
「ですから、SONYの純正のベルトを使ってくださいと申しております」
「それって売っているのですか」おとーさんが譲歩して話に付き合う。
「いえ、箱に入ってます」
「箱?」
「TVが入っている箱です」
3年前に勝ったテレビで、箱はすでに破棄していてそんなものはない。
液晶を突き抜けないネジのミリ数を教えて欲しい、といっているのになぜ聞いてることに返事をしないのだろう。
これはややこしくなるぞと誰もが思って、おかーさんも、南も電話口でかたずをのむ。
おとーさんの気が立ってきた。
「あのね、聞いたことに答えてくれますか? 純正のベルトがないから市販の物を買ってきたので、そのネジのミリ数を計って教えてくれればいいだけなのに、なぜ純正を使えとしか言わないの? あなたやる気あるの?」
おとーさん、スイッチオン。
「これは個人的な意見ではないのです」
「言ってることがよくわからない。会社を代表して話しているのならば、余計にその対応はまずいよ」
そこを指摘すると「私ではわからない」という。
「この人ばかなAIみたいだね」
南が小さな声で言うので、おかーさんが人差し指を立てて自分の口元にもっていく。
最悪なのはこちらがしゃべっている途中に、おばちゃんは自分の意見を上からかぶせて「だから、純正ベルトじゃないと保証しかねる」と何度も否定してくる。
「誰も保証してくれと頼んでいるわけではない。あなたには話が通じないようだから、話ができる人と変わってくれる」とおとーさんが電話を替わるように促す。
「調べるのが面倒くさいだけなんだと思うよ」とまたも南が口をはさむ。
私が南に向けて、笑顔でOKサインを出す。
おとーさんのイライラ度は50をさした。
イライラ度のMAXは10なのでイライラ度計は壊れてしまった゜句読点も壊れた。
☆ ☆ ☆
またしてもずーーっと待ち続ける。
上司という男性が電話に出る。
「10分以上まつこと3度。そして聞いたことに全く答えず、やる気がないのか、バカなのかどっちかわからない対応にびっくりしています」
「お待たせしたのは電話の内容を引継いでいたものですから」
「だったらそれなりの状況説明が必要でしょ。あなたを10分間も待ったし、この電話をかけてからすでに30分近く要しているのですよ。たったネジのサイズを確かめるために」
ここからさらに10分会話が続きやっとのことでネジのサイズが判明する。
大人の会話ではないし、大人の仕事ではない。
園児レベルの会話をSONYと繰り広げた午後でした。
☆ ☆ ☆
自民党みたく聞いたことに答えることができない大人は多い。
政府もSONY4も、岸田総理と社長をはじめ「聞かれたことに答えよう」キャンペーンを張ったほうがいい。
そうすれば、国会もスムーズに進む。
「聞かれたことに答えない人は、聞かれたら困ることを隠しているからか、知らないことを知られたくないプライドか、単に質問がデタラメで答えるのがめんどうくさいからか、答える側がバカなのかのどれかだね」
と南が言いました。
必要なのは、知的な会話を交わすスキルではない。
小学生でもできるまじめな態度だ。