南が5年生の時に一緒にサンドイッチを作ったときのお話。
切りやすくするために冷蔵庫で冷やしておいたパンをまな板の上におく。
パンがカチカチだよと心配する南に、パンを切って具を挟んだりしている間に元のふわっとしたパンに戻るので大丈夫よと説明しながら、パンよりも刃が長い包丁でパンを押しながらゆっくりと切っていかせる。
やっぱりバットを扱っているほうが楽だわ、と長い包丁に及び腰になる南。
ゆっくりと優しくゆで卵の皮をむかせて、水気をしっかりとる。
ゆで卵はおかーさんとよくむくから手際がいいでしょと得意げ。
そーーっと半分に切って黄身を白身から取り出す。
粗熱をとったあと、白身はみじん切りにする。
黄身はフォークでつぶすだけ。
黄身を少なめのマヨネーズと塩で味付けをして白身を混ぜる。
パンに塗りこむ過程で余裕が出てきた南の質問がはじまる。
正しいことを決めるのって多数決でいいのかな?
オレはよくわかんないけど、なんだか違う気がするんだよね。
えーっと、とりあえず食べなさいと促して
ばーばは、包丁を扱っているほうが楽だったわ、としばし時間を稼ぐ。
☆☆☆☆☆
人として正しいことって決して多数決ではない。
自分だけにしか見えていない正しい道もある。
自分だけが人と違うからといって躊躇しないように。
自分をごまかしていなく
自分の都合ばかりではなく
周囲もハッピーなるのであればそれはきっと正しい。
あなたたちはまだ若いから、夢を語る時間をもつのは
素敵で正しい時間の使いかただと思う。
たくさんのやりたいことをいっぱい考えなさい。
それがあなたたちの正しい今だと思うわ。
ばーばなんて先行きが短いから、自分の夢を語ったり文句を言ったりするよりも
やりたいことをどんどんやったほうが時間の有効活用になるのよ。
だから、こうやってサンドイッチを作るのよ。
ばーばにはこれが正しい選択なの。
ね、正しいって人によって違うでしょ。
国や時代によっても違うのよ。
一夫多妻の国もあったり、お礼を言ったら失礼になる部族もいたり。
学校の指導も昔は殴られるのはあたり前だったけど、今は絶対ダメでしょ。
と話してみた。
話し終わると同時に、南は口いっぱいにサンドイッチをほうばりながら、そーか、わかったよ。ばーばハムも切って入れようよ、と興味はすでにここにはない。
絶対わかってないと思うわ。
でもハムは入れようね。
多数決で決定。