買ってきたばかりの出来立てのパンを袋からテーブルに広げた瞬間、我が家は幸せな気分になる。
あるとき、友人夫婦が数十年にわたり営んでいるフランス料理屋でその話を持ち出すと「おいしいパン屋さんはその瞬間を想像しながら作っているのよ」と、シェフの奥さんが話してくれた。
走り出して間もなく、唐突にそんな話を思い出す。よしっ、今日のお昼はパンにするのだと、心に固く誓う。時間はたっぷりあるのに、カラダの軽さと空腹感が思春期のように焦りを引き出す。
目線を降ろすとNIKEのランニングシューズの紐が少し緩んでいる。結び直す時間も惜しい。ジョギングをランニングに切り替えて急ぎ6Kmを走破する。
シャワーを浴びると思いのほか疲れていることに気づく。コットンの大きめのTシャツを着て、やわらかでおいしい食パンのようにふにゃっとソファにへたり込む。
Yahoo!の天気予報によると外気温は35度。バテたのは100%暑さのせいにしよう。
カラダを落ち着かせるために、冷蔵庫で充分に冷やされた輪切りのトマトにオリーブオイルと塩をかけて食べる。力士がまわしを叩くように、季節の食べ物はパン屋に行かねばならない私にエネルギーをくれる。リカバリー・ミュージックはJoni Mitchellの「Hejira」にする。
パンを買って駐車場に戻る横を、数人の男子小学生たちが小学生らしくはしゃぎながら走り去っていく。先頭を走っていた子の足に、風に吹かれたビニール袋が絡みつく。彼は一旦立ち止まりその袋をなにもなかったかのように左手で拾い上げ、それを持ったまま走って友達のあとを追う。
捨てないんだ。ゴミをかまうのだ。何と素晴らしい。
きちんと育てられている。
正しく育っている。
ストリートでは大人の不始末を子どもが拭っているのだった。
☆ ☆ ☆
UKのExpansionレーベルから毎年リリースされる「Soul Togetherness」を聴きながら走のランニング。このシリーズは外に持ち出してイヤフォンで聴くのがいい。家の中ではいまいちだった曲が輝きだす。何より演奏が素晴らしく切れたリズムで気持ちよく走れる。
1.Tower of Power-Addicted to You
2.Carmichael Musiclover-Pure Sweetness
3.Dw3-Never Gonna Stop
4.Lou Draws-Come Over
5.Charlie Wilson-Forever Valentine
6.Will Downing-Right Where You Are
7.Super Db-Kool Funk (Chris Bangs Extended Remix)
8.JB Rose-Back to Love
9.Johnny Baker-It's Your Night
10.Randy Hall-A Beautiful Dream
11.Cool Million Featuring Matthew Winchester-Keep on (Boogie Back Mix)
12.The Weather Girls-Stand Up (Rob Hardt Mix)
13.Sam Wills-Undercover
14.Privatprojekt Feat. Stefanie S. And Nigel Lowis-Don't Walk That Way (Chic a Delic Xtended)
15.Paprika Soul-Standing Right Here
2曲目のこの曲がいいのだけど素性は不明。