「ばーば、監督がね、いち日、いち日を大切にして向上心をもつようにって練習の最後に話してくれたんだけど、オレには全然ないなー」
週末、野球の練習から帰ってきた中1の南が驚くことを言い出しました。
「え?、毎日野球の練習を自主的にしてるじゃない、どうしてそう思うの?」
「野球も勉強もだけど、人よりすごくなろうとは思ってないから」
「それって成長しなくていいってこと?」
「そうじゃなくて、自分なんだよね」
「どういうことなのかしら?」
「うまくなりたい、できるようになりたいと思ってるだけだから、向上心はない」
☆ ☆ ☆
彼の主張は、主語と述語、形容詞や副詞、要は日本語の使用方法が支離滅裂のため会話形式が成り立ちません。
まとめてみると以下のようになります。
自分の技術を周囲と比べて一喜一憂してもしょうがないと思っている。
(あまりに気にしすぎないので、それはそれで心配しています)
周りには多様な才能をもった選手がたくさんいる。それをいちいち気にして、だれかよりもうまい、だれかよりも下手だなどを気にしていてもキリがない。
(ばーばもそう思います)
打つのも守るのも走るのも一番じゃないと気が済まない事になるけど、それって世界でも大谷くらいでしょ。
(世の親の最重要反省点ですね)
それよりも自分に足らない技術を習得することと、長所を伸ばすことに集中したほうが効率的だし、なによりも楽しい。
(50字ほどにまとめていますが、この話の解読に苦労をしました)
そのために行う練習はきついともイヤだとも思わない。
はじめの一歩もそうなんだよ。
(はじめの一歩の影響が大きいことがかわいい)
彼の話を聞くと「人より抜きんでる気持ち」が向上心だと思っている節がある。
「あなたそのままでいいのよ」ととりあえずなだめる。
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私も南に支離滅裂な会話を繰り広げたので、まとめてみます。
勉強もスポーツも向上心があることはとてもいいけど、早くできるようになろうとして先走ると長続きはしません。特に小中学校の時のスポーツも勉強も勝負時は今ではないと思います。でも、将来のために今しておくべきことはあります。それは個人差があるので一律ではありません。
何をするにつけても、親も子も今の自分の立ち位置をきちんと把握して、広い視野と時間の余裕をもって焦らないことでしょう。
今日一日を大事にしようということは、今日も明日も勝ち続けることではありません。
勝ち続けるって疲れるのです。
負けを恐れるようになり、他人に負けまいとして焦るから。
あまりに強いと大横綱・北の湖のようにヒールになってしまうことだってあります。
今日一日はもちろん大切にしなければなりません。
自分ができる範囲で自分のテンポで。
あなたが言うように他人を気にする必要はありません。
スポーツ選手の場合は、特にケガをしているときほど他の選手の動向が気になるものです。焦る心のコントロールが難しいのです。
1ミリでも前に進む気持ちを大事にするのが向上心です。
ひとつのことを大切にして、長く続けるって難しいけど、あなたはできていると思うわよ。がんばって続けましょう。
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「ばーばは、何か続けていることがあるの?」
おもいっきり困った質問です。
「あるわよ、生きてることよ!!」
「おー、やるねー、ばーば。100点だよ」
ほめてくれて、ありがたく嬉しいのだけど、えらそうに言う割には、ばーばの継続性は乏しくて、そのくらいしかないもので……。