i-class collection

ばーばと南 + Run&Music

最後の晩餐は、ばーばのおにぎりで

南が小学校2年生の時の夕飯時のお話。

 

 

夕食をほぼみんなが食べ終えようとしているころ、南のおとーさんが「最後の晩餐は何が食べたいか」という話題をみんなに振りました。

 

大人たちは、やれ寿司だ、うなぎだ、焼肉だなど、ここぞとばかりに高級な外食を並べ立てるのをしり目に、南が

 

「ぼくは、ばーばがつくったおにぎりと味噌汁がいいな」

 

と言ってくれました。

なんと健気な、なんと素直な、なんと無邪気な。

 

ニコニコしながらご飯をかきこむ孫に向かって

「まー、ばーばとてもうれしいわ。ありがとう。でもね、あなたが死んじゃうころにはとっくにばーばはこの世にいないから、おにぎりをつくってあげることができないのよ」

と残酷に言い放ちます。

 

小学2年生の純粋な意見に、私はなんの夢も配慮もない至極残念極まりない説明をしてしまいました。

 

するとお椀を抱えている南の目から、あふれ出るとはまさにこのことだ、というぐらいに大量の涙が零れ落ちてきます。

 

 

箸を止めてにわかにあわてる大人たち。

南のおとーさんが、目くばせで何とか気の利いた答えに言い直すよう、サインを送ってきます。

私は、しゃくりあげながら泣く南の横にあわてて行き、背中をさすりながら、もう少しまともな答えが返せなかったものかと、言葉が追いつかなかった自分を大いに反省しつつ、またこの事態をどのように収拾したものかをしばらく考えていたのです。

 

 

そして、

 「じゃあ、その時は天国から降りてきて作るわ

 「ありがとう、でもハシゴ踏み外さないようにね」

 

ユーミンの歌に出てくる天使のように、天国からさらっと降りてこれないんだ。

危険なダメ出しが頭を少しだけよぎったものの思い直して、

 

私 「わかったわ。ハシゴをちゃんと降りられるように天国でもランニングを欠かさないようにするわね」

と声を張ります。

 

 「うん、よろしくね」

と言って箸を持った手の甲で涙を拭きつつ、にっこりしてごはんを食べだした。

 

一同ほっとして、夕飯は無事再開。

 

ばーば冥利に尽きる幸せな夜でした。と、当時のノートに記してあります。

相当うれしかったのでしょう、年甲斐もなく💛までつけて。