友人の住む町内は、9つの町内がありそれぞれに町内会長がいて、さらにその町内会長を束ねる最終ボスである会長がいます。
そのボスは何に触発されたやら、急に能登地震の募金を集めると言い出しました。
ボスの行動はスピ-ディーでした。
長い長い紋切り型の時世の挨拶とともに、
遅々として進まない復興を政府に任せてはおけない。
日本人として見捨ててはおけないでしょう。
そこでわが町内は一致団結し募金を送ろうと思う次第でいます。
という手書きの文章が各町内を回ります。
ボスの素案。
ひと家族1,000円以上。
例外はなし。
各町内会長は1週間以内に集めること。
半強制的な圧力に各町内で不満は続出し、それぞれの町内会長と参加希望者が集まり会議が開かれます。
結果、自由意志での募金活動となり、集まったお金は被災地に送ることはできました。
でも今度は各町内会の中に亀裂が生じてしまいました。
この亀裂は誰が埋めるのだろうか。
いや、どうしたら埋まるのだろうか。
と友人が心配しています。
無理です。
埋まりません。
☆ ☆ ☆
古くから住んでいる人や、新しく越してきた若い世代が入り乱れて喧々諤々の議論が交わされます。
- すでに他で募金した人は?
- 年金受給者は半額でいいんじゃない
- シングルマザーは免除
- じゃあ、シングルファーザーはどうする?
- 町内の一斉掃除に来ない人は倍額
- ボランティア精神をわからせるにはいい機会だ
- そもそも年に2回しかない掃除に出てこないなんて
- 若い人ほど非協力的なので、3倍でもいいんじゃないか
- シングルマザーで掃除に来られない人は?
- シングルファーザーは?
- シングルファーザーは稼いでいるからいいだろう
- そもそも会長が勝手に文章を出していいものなのか
- いいことをするのだから問題ないだろう
- 募金はいいことなのか?
- 困った人を救うのはいいことだろう!!
こういうときは会議進行にセンスが必要で、心地よくソフトにすすめなければならないのですが、その役割をだれも採らなかったようです。
こういう役目は面倒くさいですからね。
不謹慎だけど、能登地震の復興が遅々として進まないから立ち上がろうとする会議が、
徐々に本論から外れていく議論は聞いていて楽しそうで微笑ましくもあります。
もちろん当事者としてはいらだち度ピークにあるのでしょう。
1時間を超す議論にあきれた近所のマンションに越してきた転勤族の人たちは、
「決まったら連絡くださいね」
と言って上手に席を立ちます。
見放された会議はその後、あーだこーだもめながらも、最後はお酒も出たりして延々と続いたようです。
☆ ☆ ☆
募金って何?
もっといえば
町内会って何?
町内会で決め事を計るときのシステムはどうなってるの?
いきなり結論を急ぐのではなく、ことばや決まり事を理解して整理されたところで話し合わないといけなかったんじゃないですかね。
ボスの思いついた提案をボスが言ったからではなく、町内会のシステムや決まりごとに照らして落ち着いて解いていけばよかったのに、個人個人の意見を無尽蔵に出させるから混乱してしまいます。
システムに当てはまらないのであれば、今は町内会としての問題ではないが、今後どうするのかを話し合っていけばよいのであって、
掃除に来ない人は倍額って、罰金の議論にすり替わっているじゃないか。
ことばの意味がそおれぞれでズレてるから会議もズレる。
よくあることです。
もう最後はシングルファーザーは稼いでいるからとか、いいことをするから問題ないとか、感情論での議論に終始してしまっています。
☆ ☆ ☆
町内で生じた亀裂は、ほおっておけば時が解決するのではないかと思います。
あえて、触ってどうこうしない方がいい時もあるのです。
女子同士のもめごとのように。
ほおっておけば自然と解決するものです。
1年で町内会長も変わることだし。
なんとかしようとしても、私は無理だと思いますし、しなくていいと思います。
最後まで残った人たちはお年を召している人たちばかりだったようで
ただただ、人と話したかったんだと思うからです。
こういう機会でもなければ、論を交わすことも話すこともないのです。
内容はメチャクチャでもよかったのかもしれません。
この間はメチャクチャだったから、町内会の成長のためにまた集まって何かをしようとまた議論したらいいんじゃないですか。
結論を出すことが目的ではないのです。
集まってワイワイいうことが大事なのだから。
ご近所のうわさ話を、病院の待合でしゃべるよりもずっと健康的だと思います。