南が学校から帰ってきて、「今日はランニングはやらないから散歩に行く」と言ったので「あー、私もついていく」といって一緒に数キロを散歩しました。
散歩中の南はいつにもまして饒舌でずっと話しています。
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「ケイタはね、勉強が算数が苦手でうまくできなくて力が弱いけど、6年生とは思えないくらいに絵がすごく上手なんだよ。学校のだれもケイタの絵にはかなわないと思う」
「オレとケイタが隣の席だったときに、先生が、南、ケイタに教えてやってくれっていってからは、席が離れてもオレについてきて勉強を教わるようになった」
「なんで塾に行ってるお前を、行っていないオレが教えなきゃならないんだよ、って言ったら、だって塾では4年生のことをやってるんだよと聞いてびっくりした」
「ケイタの算数を見ていると、それは納得かなと思うので3年生まではできるんだすごいじゃんって言った」
「ケイタもすごいでしょって言うので、お前が言うなと思ったけど黙ってたよ」
「そして、80点とかとってきたらほらほらって、見せにきてくれるようになった。
オレはやったじゃん、すごいじゃんといって、頭をなでてほめる」
「絵を描くときは逆にオレがケイタに習う。でもあいつはフツーに書くといいんだよっていうから、それじゃわかんねーだろっていったりしてる」
「昼休みはケイタは外に出て自分からみんなの輪に入る方じゃないから、ケイタにドッジボールやるかって聞くと、やるっていうからみんなに話して一緒に入る」
「ケイタが言うと、えーって嫌な顔をするバカで意地悪なやつがいるからオレが言うんだよ。そしたら誰も文句は言わないから」
「そんなことを6年生に入ってからずーっと続けていたら、知らない間にオレはケイタのことを気にするようになっていることに気づいたんだよ」
「あいつは、いいかげんだけど、チームを作るときはケイタも一緒に呼ぶし。でも、ケイタはそのことを知らない。言う必要もないと思ってる」
「ケイタと仲良くなるきっかけを作った算数も悪いもんじゃないかなと思ってみるけど、それは違うようで嫌なものは嫌だなって思った」
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「昨日の学校帰りに空が青いなー、と思って見ていたときに気づいたんだけど、きっとオレのこともだれかが見てくれているんじゃないかなと感じた」
「そのオレを見てくれている人も誰かが見ている」
「そのオレのことを見てくれている人を誰かかが見ている人にも、見ている誰かがいる」
「そうやって人は誰かに見られていてずーっとつながっていて、誰かが誰かを必ず気にしてくれているように突然思えたんだよね。鏡の中にずっと映っていくみたいに」
「なんか、よくわからないんだけど、雰囲気だけどね」
「だから人はひとりではないと思うけど違うかな、ばーば」
「間違いなく、そのとおりよ!!。あなた素敵ね」
南と散歩中の会話でした。